について チリハウス
ハンブルクのコンターハウス地区東端で、チリハウスの鋭い角が船首のように街へ突き出す。印象的な輪郭の背後には、より大きな物語がある。フリッツ・ヘーガーが商人ヘンリー・ブラレンス・スローマンの依頼で1922年から1924年に設計した、地上10階のオフィスビルだ。第一次世界大戦後のハンブルクの商業再建と、チリ硝石の輸入貿易が建物の背景に重なる。濃い色のれんが、彫刻的な装飾、南側の曲面外壁により、れんが表現主義の代表作となった。現在もオフィスとして使われ、ハンブルクの世界遺産を象徴する建物のひとつである。
チリとのつながりを持つハンブルクの建物
名称は大西洋の向こうを指す。スローマンは、肥料やその他の工業用途に使われたチリ硝石の取引と輸入で財産を築いた。ハンブルクの文化財当局は、彼を建物の依頼主として紹介している。設計者はフリッツ・ヘーガーだ。この関係がチリハウスに国境を越える歴史を与えている。ドイツ北部に建つ巨大なビルは、南米まで伸びる商品と商業のネットワークを背景に実現した。ハンブルクが商業地区を再編し、経済の立て直しを目指していた時代でもある。
建設はワイマール共和国初期の困難な時期、1922年から1924年にかけて行われた。ハンブルク市の公式解説は、第一次世界大戦後の経済回復への期待と、中心部が次第に商業用途へ変わった動きの中でこの建物を説明する。チリハウスは住宅や市庁舎ではなく、オフィスと港湾関連企業のために計画された。その機能を知ると、隣接するシュパイヒャーシュタットとの違いも分かりやすい。コンターハウス地区には商社の事務所が集まり、倉庫街には港に着いた商品の保管や荷役の空間が広がった。
この建物は都市の大きな遺産群の一部で、単独のユネスコ登録物件ではない。2015年、ユネスコは「シュパイヒャーシュタットとチリハウスを含むコンターハウス地区」をひとつの遺産として登録した。隣接する二地区は機能が異なる。チリハウスはコンターハウス地区の象徴であり、そこでは主に1920年代から1940年代に港湾関連企業の大規模オフィスが建てられた。登録は国際貿易の変化が商業建築と都市計画をどう動かしたかを示す。チリハウスから商業地区を歩き始めるのもよいが、建築様式を読むにはこの建物自体が最も分かりやすい。
建物の形をつくる設計
ヘーガーの設計は、船首を思わせる東端の鋭い輪郭で語られることが多い。印象的な比喩だが、まずは制約のある都市敷地に合わせたオフィスビルである。南側の外壁は通りの線に沿って曲がり、東端では角が劇的な垂直の稜線になる。濃色のクリンカーれんが、強く区切られた面、光と影の意識的な対比に、れんが表現主義が表れている。普通の箱形建築に装飾を貼り付けたのではない。長い商業ビルにリズムを与え、街に向けた存在感を生み出している。
ハンブルクの文化財紹介によれば、建物は10階建てで、先端にはチリの紋章を象徴するアンデスコンドルが据えられ、リヒャルト・キュールの彫刻も用いられた。複雑なれんがの積み方が外壁を形づくり、内部には建設当初の玄関ホール、階段、連絡通路が残る。チリハウスはドイツ初期の高層建築のひとつだが、価値は高さだけではない。伝統的なれんが造りと表現力のある建物の量塊を組み合わせ、近代的なオフィスに強い都市景観を与えた。通りから見上げれば船首形が分かり、壁面に沿って歩けば緻密な反復が見えてくる。
交易の富から保護される都市遺産へ
チリハウスはインフレと不確実性の時代に建てられた。ハンブルクの公式解説は、発注を経済再生への期待と結び付ける。スローマンのチリ硝石事業が資金面の背景となり、ヘーガーは商業施設の要望を建築のランドマークへと翻訳した。この関係から、港町が世界的な商品流通をどう建物や都市のアイデンティティに変えたのかを考えられる。ひとりの天才建築家の物語に単純化してはいけない。依頼主、交易、事務労働、都市再開発がすべて建物の姿をつくった。
チリハウスの保存は、ハンブルクの歴史的な商業中心部を守る取り組みの一部である。ユネスコはシュパイヒャーシュタットとコンターハウス地区を、機能の補完関係と建築が19世紀末から20世紀初頭の国際貿易の拡大を示すとして、ひとつの遺産にまとめた。チリハウスはオフィス街の中心的な建物で、隣の倉庫は保管と港湾物流を伝える。距離が近いため歩いて巡るのに適し、短い市街散策で同じ海運経済に対する異なる建築の答えを見比べられる。
現在のチリハウスを訪ねる
外観は周囲の通りから見学でき、とくに東端の尖った部分では船首の比喩がよく分かる。ハンブルク観光案内によると、アーチをくぐると中庭のひとつへ入ることができ、店舗、カフェ、レストランがある。公開されているこの範囲からは、建物の大きさや翼部が中庭を囲む構成を近くで観察できる。ただし、オフィス階、階段、私有の部屋まで自由に見学できるという意味ではない。現在も使われる商業ビルとして、案内表示に従い、入居者に配慮し、全館が博物館のように開放されていると考えないようにしたい。
公共の通りから外観を見るのに専用チケットは必要ないが、店舗や特別見学へのアクセス条件は変わることがある。各店舗、カフェ、レストランの営業時間は個別に定められ、ユネスコ登録自体の開館時間ではない。コンターハウス地区の他の建物と合わせて歩き、時間があればシュパイヒャーシュタットの運河と倉庫も訪ねよう。同じ登録遺産に含まれるが、場所としては別の地区だ。有名な船首形だけでなく、れんがの積み方、曲面の外壁、名称に残る交易史にも目を向けたい。チリハウスは近代的なオフィスビルの姿を通して、ハンブルクの商業の過去を見せてくれる。