イランのガズヴィーン州、アルボルズ山脈の険しい岩峰にアラムート城跡がある。1090年にハサン・サッバーフが城を掌握して以降、ここはニザール派イスマーイール主義国家の政治、宗教、軍事、学術の中心となった。1256年にモンゴル軍の攻撃で陥落したが、防御施設、岩盤を利用した空間、水の貯蔵・供給設備の遺構は、山岳地形を生存と防衛の仕組みに組み込んだ技術を今に伝える。
ユネスコは2026年、「アラムート城と関連要塞群」を世界遺産に登録した。対象はアラムートだけでなく、ランベサル城など谷に点在する計7か所からなる連続資産で、11~13世紀のニザール派共同体の組織力と知的伝統を示す。中世ヨーロッパの記述から派生した「暗殺教団」の物語だけで理解せず、考古学的証拠とイスマーイール派の実像を分けて見ることが大切だ。