について ロカス島
ロカス環礁:南大西洋で唯一の環礁
ロカス環礁はブラジルのリオグランデ・ド・ノルテ州に属し、州都ナタールの北東約260キロメートル、フェルナンド・デ・ノローニャ諸島の西約145キロメートルに位置する。南大西洋で唯一の環礁であり、火山活動に由来する海底基盤の上に、造礁生物と石灰質堆積物が長い時間をかけて現在のサンゴ礁地形をつくった。
ここはホテルや集落のある南国の島ではない。低い砂州、礁湖、礁原、潮だまりが潮の干満によって大きく姿を変え、海面上の陸地はごく限られる。脆弱な自然環境のため、ロカス環礁は観光地ではなく、厳格な保全と科学研究を優先する場所である。
ブラジルの海洋保全を象徴する保護区
ブラジル政府は1979年6月5日にロカス環礁生物保護区を設置した。管理機関ICMBioが公表する面積は3万5186.41ヘクタールで、沿岸・海洋生態系を対象とする生物保護区に分類されている。
2001年にはフェルナンド・デ・ノローニャとともに、「ブラジルの大西洋諸島:フェルナンド・デ・ノローニャとロカス環礁保護区」として世界自然遺産に登録された。ユネスコは、マグロ、サメ、ウミガメ、海生哺乳類、熱帯性海鳥にとって繁殖、採餌、移動の重要な海域である点を評価している。
潮だまりに凝縮された海の生態系
干潮時には礁湖と多くの潮だまりが現れ、透明な浅瀬に魚や無脊椎動物が一時的に残される。これは世界遺産を象徴する景観の一つである。環礁の陸上部は貝、サンゴ、藻類などの遺骸を主体とする堆積物からなり、礁湖を囲む礁体には被覆性石灰藻やムカデガイ類などが大きく関わっている。
海鳥の繁殖・休息地であると同時に、アオウミガメの重要な産卵地、タイマイの採餌場でもある。レモンザメやコモリザメを含む魚類、甲殻類もこの海域で成長や繁殖の一部を過ごす。孤立しているから安全なのではなく、違法漁業や海洋環境の変化を継続的に監視する必要がある。
一般観光が認められていない理由
ブラジルの自然保護区制度を定める法律第9985号第10条では、生物保護区は生物相と自然過程の完全な保全を目的とし、一般の立ち入りは原則禁止とされる。例外は特別規則に基づく教育目的の活動で、科学研究にも管理機関の事前許可が必要である。
そのため、ロカス環礁には一般旅行者向けの営業時間、入場券、宿泊施設、定期観光船は存在しない。フェルナンド・デ・ノローニャから比較的近く見えても、個人で船を手配して上陸、潜水、礁湖への進入を行うことはできない。研究者の受け入れ枠も限られ、ICMBioやSISBIOの正式な承認が求められる。
訪れずに理解するという選択
一般の人はユネスコ、ICMBio、研究機関が公開する映像、管理計画、研究成果を通じて環礁を知ることができる。周辺海域を合法的に航行する場合も、保護区の境界、航行情報、ブラジルの環境・海事規則を守らなければならない。
ロカス環礁が教えるのは、世界遺産のすべてが「行くべき観光地」ではないということだ。礁湖、海鳥、ウミガメ、サンゴ礁の未来は、人間活動を厳しく制限し、科学的監視を続け、海の境界を尊重する姿勢にかかっている。