ナリン・カラは、ロシアのカスピ海西岸にあるデルベントの町を見下ろす丘の上に築かれている。ここではコーカサス山脈が海岸に迫り、山と海の間に狭い通路が残る。さまざまな伝説よりも、地形に目を向けると要塞の意味がよく分かる。北方の草原と南方の地域を結ぶ勢力にとって、この通路を押さえることは重要だった。城塞は、山麓の町と切り離された城ではなく、広域防衛景観の高所に置かれた中核である。
ユネスコ世界遺産に登録された範囲には、ナリン・カラ城塞、デルベント旧市街、現存する防衛施設が含まれる。石造の防衛網は山側の城塞とカスピ海へ延びる平行壁を結び、壁の一部は海中にまで達し、二つの壁の間に町が築かれた。主要なササン朝期の防衛施設は5~6世紀に整えられたが、この場所の防衛上の役割はさらに古く、後代の支配者も施設を修理・改修した。考古学と文献は複雑な歴史を示している一方、アレクサンドロス大王が壁を造ったという説を裏付けてはいない。