トリニダードの北東約12キロに、サン・ルイス、サンタ・ロサ、メイエルという三つの農村の谷が連なる。ここを歩くと、植民地都市の富がどこから生まれ、その代価を誰が負ったのかが見えてくる。バジェ・デ・ロス・インヘニオス(製糖工場の谷)には、旧製糖所、農園主の邸宅、奴隷にされた人々の居住施設、道、考古遺跡が点在する。門をくぐって決められた順番で回る一つの施設ではなく、トリニダードを拠点に交通を手配する広大な文化的景観だ。ユネスコは1988年、都市と谷を一体の世界遺産として登録した。街の建築と製糖農村は、結びついた一つの歴史を示している。
この谷の砂糖経済は18世紀末から拡大し、19世紀に最盛期を迎えた。三つの谷では50を超える製糖工場が稼働し、世界遺産の範囲には75か所の旧工場と関連施設の遺構が残る。ユネスコによれば、1827年には1万1千人を超える奴隷化された人々が工場で働いていた。強制労働から生まれた富はトリニダードの大邸宅を支え、街路、広場、教会の形成にも影響を与えた。ここを美しい農園の眺めだけとして受け取るのではなく、暴力と強制労働に支えられた経済制度の証拠として見る必要がある。