パリの東に立つヴァンセンヌ城は、高い主塔、城壁、ゴシック様式の礼拝堂が王室要塞の規模を伝える。中世を再現した舞台ではなく、王権、軍事利用、牢獄など複数の時代が重なる史跡だ。訪問すれば城の歴史に加え、現在のヴァンセンヌ市やパリ都市圏との関係も見えてくる。
始まりはパリ東方の森に設けられた王室の狩猟用施設だった。公式沿革は12世紀のルイ7世に結び付く館を記録している。14世紀、シャルル5世が大規模な要塞付き王宮へ発展させ、1361年に主塔の建設を始め、城壁や礼拝堂も整えた。防御拠点であると同時に、王権を示す場でもあった。パリに近く、それでいて通常の都市宮殿とは異なる存在だった。