レバノン南部のサイダ近くにあるエシュムン神殿は、一つの壊れた建物というより、川と建築が結びついた風景として理解したい。近くをアワリ川が流れ、古代の人々は水を水盤や儀礼の洗いに使う場所へ導いた。ここは治癒と結びつくフェニキアの神エシュムンに捧げられた聖域だった。レバノンがユネスコ世界遺産暫定一覧表に提出した資料は、遺跡をサイダの東約5キロ、ブコスタ村の川の南岸に位置づけ、面積を3.6ヘクタールとする。この数字は、街から北東へ2キロの小さな神殿という古い説明を訂正する。河谷、水路、何世紀もの建設を一緒に見るところから物語が始まる。
同資料は複合施設の始まりを紀元前7世紀末に置き、紀元後6世紀まで使用が続いたと説明する。これほど長い時間を一人の王や一つの様式だけで語ることはできない。フェニキアの信仰、ペルシャ期の王による後援、ヘレニズム期の装飾、ローマ期の増築、さらに後のビザンティン教会が、異なる場所に痕跡を残した。遺構は継続と変化を示す物質的な記録である。建物の姿や宗教的な環境が変わっても、水は幾つもの時代を結ぶ糸となった。