ティペラリー州の緑の平原から不意に立ち上がるロック・オブ・キャッシェルは、アイルランド屈指の壮観で人の心を捉える景観である。中世の塔・礼拝堂・屋根のない大聖堂の群れを戴いた石灰岩の露頭が、空を背に影絵となって浮かぶ。聖パトリックの岩とも呼ばれ、大いなる教会の中心となる前は、数世紀にわたりアイルランド南部の権力の座であった。
これほど固くアイルランドの歴史と伝説を溶け合わせた場所は少ない。ここで王が戴冠され、伝承によれば聖パトリックその人が説教し、この国屈指のロマネスクとゴシックの建築が今も立っている。