カザンラクのトラキア人墳墓はブルガリア中部カザンラクのTyulbe公園にあり、「トラキア王の谷」と呼ばれる広大な墳墓景観を代表する。1944年4月19日、防空壕を掘っていた兵士が偶然発見した。通路、長方形前室、円形ドーム墓室からなり、平面、組積、壁画技法、出土品によって紀元前3世紀前半に年代づけられる。1979年、ブルガリア最初期のUNESCO世界遺産となった。
狭い内部には精緻なフレスコ画が残る。通路は戦闘場面、墓室ドーム下の主画面は高位の男女の儀礼的宴を描き、従者、楽士、馬、器、食物が取り囲む。人物の姿勢、衣服、馬具はヘレニズム期トラキア貴族社会、葬送観、地中海芸術との交流を知る稀少な資料である。手首を取り合う動作はしばしば「別れ」と説明されるが、学術的解釈は一つではなく断定を避けたい。