アオスタでは、アルプスが古代ローマ街道を行く人々の声を聞けるほど近くに感じられる。山々は雄大な背景だが、町を理解するには徒歩がいちばんだ。凱旋門、門、市壁の断片、劇場のファサードを見たあと、中世の教会や回廊の落ち着いた空間へ移る。アオスタは現代生活から切り離された遺跡ではない。ローマの都市計画は今も街路を導き、その上に後世の歴史が重なっている。
ローマはサラッシ族を破った紀元前25年、グラン・サン・ベルナール峠とプティ・サン・ベルナール峠へ通じる戦略的な谷にアウグスタ・プラエトリアを建設した。軍営に似た長方形の街区が引かれ、南北のカルドと東西のデクマヌスが中心で交わる。その格子は現在の街路にも読み取れる。アオスタの名は帝国時代の創設を伝えるが、地域の遺産資料は征服以前から暮らしたサラッシ族の記憶も残している。