レトーンは、ムーラ県セイディケメル地区のクムルオワ近くに位置し、古代リュキア人にとって重要だった聖域を今に伝えている。近隣にあるリュキアの政治的首都クサントスそのものではない。両者は別々の遺跡でありながら、一つの世界遺産「クサントス・レトーン」を構成し、1988年にともに登録された。ユネスコはレトーンをクサントスの祭祀中心地、またリュキア地方と都市同盟の連邦聖域と説明する。宗教儀礼と政治決定の公示が、同じ公共空間に結び付いていた場所だ。
周囲の景観を見ると、レトーンの見学が、密集した古代都市の遺跡を歩く体験とは異なることが分かる。クサントス川が形づくった低く開けた平地に遺跡が広がり、聖域の周辺に建物の痕跡が点在する。公式記録では、レトーンにはレト、アルテミス、アポロンに捧げられた三つの神殿と、聖なるものと考えられた水源の上に築かれたニンファエウムがある。古代の生活をそのまま再現する場所ではなく、信仰、水、公共空間の結び付きをたどる手掛かりが残る場所だ。